「市民がコロナで死んでいます、助けて」…頼んだ相手は隣国の大統領

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 【リオデジャネイロ=淵上隆悠】中南米で新型コロナウイルスのワクチン確保を巡り、台湾と外交関係を持つ国と、中国と国交を結ぶ国との間の格差が鮮明になっている。台湾に外交面でも圧力を強めている中国は、好機とみているようだ。

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 「大統領、助けてください。市民がコロナで死んでいます。ワクチンが必要です」

 ホンジュラスで今月上旬、国内7市の市長がこう訴える動画がSNS上で広がり、波紋を呼んだ。支援を求めた相手が自国のフアン・エルナンデス大統領ではなく、隣国エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領だったからだ。

 動画を見たブケレ氏は11日、市長たちを大統領府に招き、3万4000回分のワクチン提供を申し出た。現地の映像では、ワクチンは2日後にトラックで運び込まれ、市民はブケレ氏の顔をあしらったTシャツを着るなどして大歓迎した。

 ホンジュラスは台湾との外交関係を維持し、エルサルバドルは2018年に台湾と断交し、中国と国交を樹立している。ワクチン接種を巡っては、独自に入手したロシア製と共同購入・分配の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」に頼るホンジュラスでは1回でも接種した人は人口の1%程度にとどまる。接種を2月から進めるエルサルバドルは、中国から届いた215万回分を活用し、少なくとも人口の約16%が1回目を終えた。

 エルナンデス氏は11日に演説し、「ワクチンの購入に必要なら中国に通商事務所を設ける」と述べ、中国への接近をにおわせた。通商事務所設置については、自国の外相が1か月以上前から接触していた中国側が「外交の懸け橋に」と提案していた、とも明かした。

 台湾が外交関係を持つ15か国のうち、9か国は中南米・カリブ海に集中している。このうちグアテマラやニカラグア、パラグアイのワクチン接種はホンジュラスと同様に低迷している。

 中国政府の台湾政策担当部門の報道官は12日、「ワクチン外交」に基づき、途上国に「ワクチンが行き渡るように努力している」と述べた。同時に、台湾と他国の外交関係を認めない根拠とする「一つの中国」原則を持ち出し、「関係国は台湾問題を適切に処理するように望む」ともクギを刺した。パラグアイ外務省によると、中国の業者からは3月、ワクチン提供の条件に台湾との断交を促す直接的な要求があったという。

 米国は、「裏庭」であるこの地域での中国の暗躍を警戒している。バイデン大統領は17日、国外へのワクチン供給の拡大を表明した。英紙フィナンシャル・タイムズは19日、「最優先供給地域は中南米諸国だ」とする米高官の発言を伝えた。

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